2012年11月18日日曜日

夏時間の庭

夏時間の庭という、08年公開のフランス映画を観ました。

場所は、銀座のエルメスにて。
私も最近まで知らなかったけど、メゾンエルメスには、シアターとギャラリーがあるのです。

シアターでは「時の恵み」というテーマの下、色々な映画を上映しています。
このチョイスが、とにかくツボなんです。
ジョルジュ・メリエスの作品とか、先日見逃したメランコリアとか。
気になる!


時間をテーマにしているのは、それがエルメスを語るときに欠くことのできない要素だから、だそうです。
確かに、インターネットやファストファッションが普及した現代では、簡単にそれなりのものが手に入るし、しかもそれで満足してしまうようになっているなと思います。



さて、この夏時間の庭。
オルセー美術館の開館20周年の記念作品で、西洋美術に興味のある人にとってはすごく面白いのではないかと思います。
ドガやコローの作品も出てきます。
淡々と話が進んでいく映画ですが、映像がきれいなので飽きません。





舞台はパリ郊外。
とある画家の美術コレクションと家を守ってきたエレーヌという女性が亡くなって、それらをどう扱うか子どもたちに決断が迫られるというストーリー。

この作品は、「時間」というテーマを単なる切ないノスタルジーとして語るのではなく、観る人がその先にある希望のようなものを感じ取ることができるように巧みに描いている、優しい映画。
見終わった瞬間、ああ、この映画大好きだ!と思いました。


印象的なシーンが沢山ありました。

・エレーヌが、久しぶりに帰省した子どもたちを見送って、ひとりで家に戻るシーン。
・不良娘の孫が、亡くなった祖母のことをボーイフレンドに語るシーン。


自分の記憶と重ね合わせてみると、胸がいっぱいになります。

私の田舎の祖母は、祖父を亡くした後、いつも私たちが帰省するのを楽しみにしていました。
それなのに、私は帰省をしたときも、自分のいつもの日常のことで頭がいっぱいだったと思う。

でも、祖母は亡くなってしまったけれど、最近でも祖母と一緒に過ごした何気ない場面をよく思い出して泣いてしまうことがあります。
彼女は今でも大きな存在感をもって私の中に残っている。

映画に出てくる孫は、表面上は素行が悪いし、美術品の良さも理解していないけれど、誰よりも純粋に祖母の思い出を大事にしていました。
時代が変わっても、きっとこんなふうに人の魂は受け継がれてゆくのかな、と思いました。



それから美術品はどう扱うべきか、という問題提起もされていました。

エレーヌの家に置いてあるときは、まるでそこがあるべき場所だというように、空気に馴染んでいた机が、オルセー美術館に寄贈されて所在なさそうにしている姿。その前を素通りしていく人々。

美術品はどうやって扱えば一番価値があるのか。
果たして、美術館に置くことがいつも正しいのか。

難しい問題だと思います。




感想が書ききれないけど、思い出すと心があたたかくなる気がします。
フランスの田舎の美しい風景が記憶に残りそう。
とにかく素敵な、愛しい映画です。

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